そのドアを開けたらゾンビがいる

わかっているんだけどねぇ〜☆

超絶多幸感!天才ジャズ不特定多数集団 Snarky Puppyは目で楽しもう!

その音楽をどれくらい好きになるかは、その音楽からもたらされた体験量に大きく関係します。魅力に触れると言っても良いかもしれない。今回は人と緊張感から溢れ出る多幸感のお話です。

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2年連続でグラミー賞を獲得しているSnarky Puppyというバンド。

バンドというか楽団と言ったほうがしっくりくるこの大人数ですが、だいたい30人前後といわれている不特定多数なメンバーは、ジャズにおいてはNo.1といわれる北テキサス大学出身のエリート揃いでそれぞれがスタジオ・ミュージシャンなどで活躍しているため、必要メンバーのスケジュール調整が困難でライブやレコーディングのスケジュールを守るために流動的になったとのこと。普段から一緒にいるわけではないこのメンバーたち、ライブやレコーディングで揃う前に各自が曲の練習をしておいて合わせるのはぶっつけ本番が多いらしく、大枠の進行以外はアドリブで成り立つジャズみたいな音楽だからこそ成立するのでしょうが、その成立が超高レベルで実現できているからこそ2度のグラミー受賞。

それを実感するためには音だけじゃなく目でも追いかけるのが一番。私もこの動画を観て完全にノックアウトされました。出来ればぜひヘッドフォンをして観てみてください。特に4分20秒くらいから始まるキーボードのソロはまばたきせずに観てください。


Snarky Puppy - Lingus (We Like It Here)

まだ再生ボタンを押していない方のために、僭越ながら写真と一緒に流れをご紹介しますね。

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序盤部は非常に訓練された凄腕ミュージシャンたちの演奏をご覧くださいといった趣きの落ち着いたテンションでジワジワと進んでいきます。

映像も各メンバーをまんべんなく捉え、スタジオの全貌も視野に入り、ふむふむこんな感じでやってるのね、と状況がアタマに入る。

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それが1分過ぎたあたりに入る、他の楽器の音を抑えて飛び出す印象的なギターフレーズによって、ちょっと風向きが変わってくる。

それまではみんなおとなしく足並みを揃えて演奏していたのが、各自ちょいちょいオシャレなフレーズをカマすようになってくる。普段音だけで聴いている時よりも目が各楽器を捉えている分、それぞれの音やフレーズが入りやすくなっているから余計に目立つ。

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ベーシストでこの集団のリーダーであるマイケル・リーグも顔・カラダ全体でグルーヴを表現しながらコジャレたシャレオツフレーズを挟んでくる。この人、これほどの大所帯を音楽的にも実務的にも見事にコントロールするスゴい人らしく、スゴいゲストヴォーカルをたくさん呼んだアルバム(これも2日位で一気に録音)を発表してR&B部門でグラミー賞獲っちゃったり、オーケストラと共演アルバムの企画を実現してこれまたグラミー賞獲っちゃったりという偉業をモリモリ達成しているんですが、どうやら相当の人タラシらしくみんなこの人のこと大好きになっちゃうみたい。でも、なんか観てるとスゴいよく分かるキュートさが溢れ出ています。毎日楽しそう。

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のちほど大変なことになる鍵盤奏者の二人、ショーン・マーティン(左)とコーリー・ヘンリー(右)。この二人もそれぞれソロアルバムを出しています。

2分30秒あたりにあらためて登場する例の印象的なギターフレーズを挟んで様子は一変、大ソロ・バトルが始まります。

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はじめに仕掛けるのは、一見真面目そうなテナー・サックスのクリス・ブロック。粘りのあるフレーズでグイグイくる。実は激しい気性かな?

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それにさらにねばっこいトランペットで絡んでくるのはマイク“マズ”マーハー。ヘッドフォンのずらし方がかわいい。この応酬の裏でもマイケル・リーグはシャレオツなベースラインを聴かせてくる。さすがリーダー、さりげないアピール。

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3往復の応酬が終わりメインフレーズに戻ったかと思うと、それまでなめらかかつアグレッシブなリズムで流れを支えていたドラマーのラーネル・ルイスがフレーズをバツンと切って一気にあたりを静寂に包み込む。そして、バスドラをキックしながら迎えた静寂の中にぽつんと佇むこの男。

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コーリー・ヘンリー。つぶらな瞳。いざ鍵盤に触るとなんとも言えないメローなフレーズを持ってきて、えっここまでの流れどこいったwみたいな賛美歌がはじまりそうなメロディーに何かが降りてきます。(神かな?)

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この人はなんといっても表情が良い。大変良い。爪弾くフレーズの美しさも然ることながら、顔で弾いてるんじゃないか?というくらいの多彩な表情からフレーズもどんどん厚みを増していく。

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キックだけのシンプルなリズムから、スティックさばきでコーリー・ヘンリーを煽っていくラーネル・ルイス。細やかなイマジネーション対決。煽られても優雅さを失わずに加速していくコーリー・ヘンリーのソロ。まろやかな音からシャープな音に音色を変え、さらにリズミカルになっていく。

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激しいフレーズを弾く時はとうぜん顔も激しくなるコーリー・ヘンリー。完全に神が宿った。

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そんなコーリーにマイケル・リーグも思わず天を仰ぐ。(何が降りてきたかな?)

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コーリーのあまりに豪華で強烈なソロに思わず顔を覆ってしまうショーン・マーティン。親友か。

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キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!

約3分もの超絶なキーボード・ソロのあとメインフレーズに戻るものの、もはや誰もコーリーの勢いを止められないといった感じでバンドみんながコーリーに乗っかるようにエンディングへと登っていく。もうコーリーvs全員みたいな感じ。なんというドラマチックな演奏なんでしょう!

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最後は当然スタンディングオベーションです。いやぁ、良いもの見せてもらった。

 

スタジオにお客さんもいれて、アーティストと同じ条件になるようみんなが同じ音をヘッドフォンで聴くというユニークなレコーディング・ライブですが、これメンバーたちも「ひさしぶり〜」って会って、それぞれが練習しておいた楽曲を1日か2日くらいで全部録音しちゃうらしいです。たしかにそれだけのメンバーを収容するスタジオを何日もおさえるのはコストが掛かり過ぎるし、一気にエイヤって録っちゃう方がなにかと節約できる。なによりお客さん入ってるから演る側もテンションもこうやって上がっていく。

何がスゴいって、これをアルバム1枚分毎回映像として撮ってあってDVD+CDというカタチで販売されているんですが、そのまま公開してくれるんですよ、彼ら。以下3つの再生リストがそれぞれアルバムなわけです。

Snarky Puppy - We Like It Here - YouTube

Snarky Puppy - Family Dinner (Volume 1) - YouTube

Snarky Puppy - Family Dinner Vol 2 - YouTube

 

どの動画でもリーダーのマイケル・リーグは誰よりも楽しそうにしていて、あぁこれがこのバンドの魅力だなぁとしみじみしてしまいます。(プロデュースで関わったビル・ローレンスやバンダ・マグダでも似たようなスタイルの動画でマイケル・リーグのノリノリっぷりが観れます。)

 

そしてなにより、赤いヘッドフォン欲しくなったでしょう?

 

  

マイケル・リーグ