本記事はGorge Advent Calendar 2015 2日目の記事です。
hanali率いるGORGE.INがGorgeを“輸入”した2012年、DOMMUNEでのGORGE特集をはじめとしたG-Shock(Gorge Shock)が連発した2013年、それまでオンラインでの配信が発表のメインであったGorgeに初のフィジカル(CD)リリースのコンピの発売と限度を知らない収録ブーティスト数に登頂は不可能かと思わせたGorge FesなどAfter G-Shockをかぎりなく推し広げていった2014年。この3年間、Gorgeは日本における芽生えと拡散に邁進していた。執拗なまでのGorge RTの嵐、音楽の幅を超え(?)志茂田景樹氏までをも巻き込んでいったその繁殖性、ある種、ジャンルとしての無酸素登頂を思わせる足取りであった。
ここで改めてGorgeとは何か、Gorge創始者であるDJ Nangaが提唱したGorge Public License(G.P.L.)に立ち返ってみたい。
Gorge Public License
- Use Toms(タムを使うこと)
- Say it Gorge(それがGorgeと言うこと)
- Don't say it Art(それがアートだと言わないこと)
2015年のGorgeシーンはこのG.P.L.を改めて見つめなおした1年であったように思う。
それまで全くルートのなかった場所をひたすら開拓、つまりオンサイトしてきた2014年までと比較すると、タムの味をしめた我々の耳には既に先人たちが残した強烈なルートが刻み込まれていた。
その耳を満足させるべくリリースされたFranz Snakeのフル・アルバムやIndus BonzeによるマッシブなGorgeトラック、全ての祖はGorjukeと唱える熟村丈二の音圧とセクシャリティーなどは正にタム廻しや鳴りを知り尽くした熟練の業と言わざるをえない。
地球に存在しうるあらゆるタムを鳴らしまくるという意味においては、Rap Brainsの『YAMABUSHI』と凄腕ブーティスト達という理想の組み合わせで送り出されたRemixアルバムや、もはや定番と化したTerminal ExplosionによるGorgeコンピ、長くに渡るJukeとの対決にバランスをもたらした「A New Hope」とも言うべきアンセム『ゆーこロータスのGorge & Jukeしようよ』など、G-ShockによってGorgeシーンに登場したレーベル、アーティストの足取りは実に確固たるものだ。
これら正統派と言っても差し支えのないピュアなGorgeに対し、一見「それはアートでは?」と勘ぐりたくなるスレスレの危険を犯しながらもさらなるルート開拓に向かう動きも登場した。
GORGE.INのトリックスターとして内外の注目を集めるuccelliは、Dommuneなどでの即興ライブから発展するカタチでHiBiKi MaMeShiBa、石井タカアキラとともにレギュラーパーティー「ToM Network」を開催。その独創的な視点でGorgeを再解釈していく。その真骨頂は、かねてからその親和性・同質感を温めてきた音頭へのラブコールを具現化した『Ondo Dimensions』であろう。Yuko Lotusの声を借り幕を開けるその前口上は、音頭の再解釈といったものではなく、明らかにGorgeから音頭への求愛行動であり、「アセンション」とはGorge版『A Love Supreme』*1にほかならない。
また、“それをGorgeと言うこと”というG.P.L.に真っ向から立ち向かったのは、『SLAB』提唱者Drastik Adhisive Forceだ。
Dommuneでのリリースパーティーも記憶に新しいD.A.Fはシンプルに「遅さ」を追求することでGorgeに別の角度から光を当てながらも全く新しいルートを生み出し、オキナワからはTea-chiによる静寂なるレスポンスが早くも届いている。
しかし、なにより強く“それをGorgeと言った”のは、Kazuki Kogaとクラーク内藤の2人のBootistだ。
2014年、Terminal Explosionがリリースしたコンピ『GORGE FES 2014 -stage4-』で颯爽と山の麓に現れた*2クラーク内藤。
チェーンソーを振り回すレザー・フェイスの美しいラストシークエンス*3をバックに「どうでもいい」と言い放つこの男こそ今年、日本のGorgeシーンでいちばんどうでもよくない男となった。
CLARK NAITO 「どうでもいい」 - YouTube
その注目度とは裏腹なタイトル『どうでもいい』の7インチレコードリリースパーティーとなったイベント『BO Vol.3』では会場となった渋谷OTOに集まった二十四以上の瞳*4が見つめる中、Gorge、SLABに留まらずシャウエッセンや音頭までこの1年の総集編とばかりのラインナップとその見事な坩堝で自身のGorgeを軽々飛び越えた。
そのライブでの奇行とも言える存在感はhanaliをもスウィングさせ、彼のGorge以前の珍しいアコースティック弾き語りスタイルのトリビュート曲『Smells Like Nirvana』*5はクラーク内藤の登場によって死んだという名言を残させた。*6今、フル・ゴルジェ・アルバムのリリースを一番待たれているBootistであろう。
一方、活動の場をカナダ・モントリオールに移したKazuki Kogaはかねてからのスタンスである単独登攀により磨きをかけたアルバムをリリースした。
収録時間は全12曲で18分半。頭から最後まで一発で聴いた後初めて作品全体が視えてくる、つまりこのアルバムはオンサイトでトップアウトするというクライミングにおけるいくつかある完登スタイルの中でもっとも価値の高い登攀の疑似体験です。 https://t.co/XUP54bbm2n
— Kazuki Koga™2.0 (@KazukiKoga) 2015, 11月 21
のちに水難に見舞われることとなったDommuneを燃やした男は今回のアルバムで明確に「オレがGorgeだ!」と未知なる山頂への飽くなき飢えを表現した。12の現在進行形のムーヴにより辿り着いた高みはもはやGorge 2.0などと形容すべきものではなく、Gorgeの歴史において叩き鳴らされて来たすべてのタムとそれによって拓かれたルートを一気にフリーソロで駆け抜け、より高い頂上へとたどり着いた。
さらにここへ来て海外よりSea Punkの雄、ウルトラデーモンが本格的にGorgeに参入するという情報とともにその音源が届いた。
Thiefist - Realized [MV] - YouTube
ミュージック・ビデオまでもが用意されるほどの力の入れようのこのEPには、日本Gorge陣営からuccelli、Kazuki Koga、そしてCRZKNYがRemixerとして迎え撃っている。両者のGorgeに対するアプローチの違いは、そのまま新たなルートを浮かび上がらせている。生命の進化よろしく海から山へと活動の場を移さんとする彼の目にはどんな光景が映っているのか、今後の動向から目が離せない。
G-Shockの雪崩を生き延びたBootistたちは今年一年、誰ひとり下山することなく各々のルートで縦走し続けてきた。
2016年に向け、さらなるG-Shockを巻き起こす起爆剤はこの中から登場するのだろうか?あるいは、あの男の帰還にかかっているのだろうか?
2016年のGorgeは今まで以上に刮目に値するだろう。
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