そのドアを開けたらゾンビがいる

わかっているんだけどねぇ〜☆

2017年5月の特に気に入ったアルバム

5月は珍しくラップばかり聴いていました。それはこの本を読んだから。すごい面白かった!

ラップは何を映しているのか――「日本語ラップ」から「トランプ後の世界」まで

ラップは何を映しているのか――「日本語ラップ」から「トランプ後の世界」まで

 

ラップに関する趣味は、かつて正方形だった頃のele-kingに載っていたDJ Shadowを筆頭とするアブストラクトなものや、コンシャスなものというのかジャジーヒップホップと言えばいいのか、そういうものが好きなので、それに近い音は新しいものでもたまに聴きはするのですが、最近はそれ以外はなかなか聴く機会がありません。トラップがあまり得意でないのでおそらく最近のものは余計足が遠のいていたと思います。

そういった私が苦手なものやイマイチわからなかったことが目から鱗でスルスルと興味が出てきた。苦手だと思っていたものの良さもちょっとわかってきたかもしれない。Migosとか聴くようになってきたし。

そうやって、本を読みながらAppleMusicでいろいろと聴きました。

2017年5月の特に気に入ったアルバム 

Summer Songs 2

Summer Songs 2

  • リル・ヨッティー
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1600

そんな盛り沢山の本のなかでも、やっぱり変わった人というかはみ出し者みたいな人が気になります。『ラップは〜』を読んでいて一番初めに気になったのがこのLil Yachty。まだ20歳くらいで、風貌やスタンスはラップの持つマッチョなイメージと逆を行く人です。元々『Lil Boat』というフリーダウンロードのミックステープを聴いたことはあって、なんとなく好奇心に引っかかり続けてた人だったんですが、今回、人となりや言ってることなどを知って俄然良さが染み込んでくるようになった。

この、なんだかわからないけれどそこはかとなく惹かれて行く感じは誰かに似ているなぁ、と思っていたら日本のラッパー、dizさんでした。私は彼の曲『死んでも頑張らない』とか『アタミで休日』が恐ろしく好きなんですよ。『死んでも頑張らない』はここで聴いたり買ったりできます。→ 余白シンポジウム | dizzy

 Lil Yachtyはフルアルバムを出したので、それもよく聴いています。タイトルがまず良いよな。

 

Mars Ice House

Mars Ice House

  • ゆるふわギャング
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥1800

Lil Yachtyに日本から呼応したかのような存在としてピックアップされていたのがこのゆるふわギャング。本書の中で作者の一人、大和田俊之氏が「最近、本当にゆるふわギャングのことしか考えていません(笑)p.44」とおっしゃっていて、今回お三方が紹介されているアーティストの中でもこれだけの熱量で言及されているアーティストはゆるふわギャングだけなのでいったいどんな人たちなんだろう?と思って聴いてみたら、これがもうものすごく良い。ものすごおおおおおおく良い。衝撃的に良い。

ラッパーRyugo IshidaとSophiee、プロデューサーAutomaticのからなるこの三人組、MVの中でタランティーノへのオマージュをやったりしてるのも衝撃的で*1、そういった◯◯っぽさというのはいろいろあると思うんですが、それこそタランティーノじゃないけど、彼らはなによりまずダントツにカッコいい。MVで観れるRyugo Ishidaさんの気だるい佇まいから醸し出される色気や存在感、有無を言わさないSophieeさんのキュートさや聡明な感じは『Dippin' Shake』のMVがやめられなくなるくらいスゴいだし、客演でもその抗えない存在感がいかんなく発揮されている。

SALUさんのこの曲でSophieeさんとRyugo Ishidaさんそれぞれが登場するシーン、それぞれに毎回息を呑んでしまう。ウッ!ってなります。カッコよくて。あまりに衝撃を受けてしまったので、ライブも観に行ったのですが、やっぱりスゴかった。この二人のカリスマティックな魅力の説得力はハンパないし、それをゆるふわギャングというパッケージで最大限発揮させたAutomaticさんのプロデュース力もホントスゴい。あまりに好きでスゴいとしか言えなくなっている自分がバカらしくなります。

完全に脳に来た。

 

そしてKOHHさんです。KOHHさんのことも知ってはいたんですがどうもピンときていなかった。宇多田ヒカルのアルバムへの客演を聴いてもその時はわからなかった。

それが、『ラップは〜』を読み進めていく過程で改めて聴いたこの曲でガツンとやられてしまった。

さきほどのゆるふわギャングにも言えることなんですが、何の気なしに流して聴いていたらメロディーにのった言葉が脳をロックオンするんです。私は歌を聴いていても言葉が頭に残らないという問題を抱えているのですが、彼らの言葉はガッツリ残ってくる。頭にこびりついて離れなくなる。言葉がわかりやすいとか日常的なことを歌っているとかそういう問題とはちょっと違うんじゃないかなと思っています。ことばを音に乗せながら確実に残らせるスキルのようなものがダントツに高いんじゃないかと思います。

KOHHを聴いててハッとしたんですが、そのセクシーさが岡村靖幸から感じるものにスゴい似ている気がするんです。言語化は出来ないんですが、聴いてていきなりビビビッと来ました、あ!KOHHは岡村靖幸だ!って。岡村靖幸さん、大好きなんですよ、私。 

Gorgeも作るロックンローラー、クラーク内藤さんがカバーした『Junji Takada』もかなりカッコよかったです。

CLARK NAITO "JUNJI TAKADA"[kohh cover] - YouTube

 

ほかにも色々聴いていたんですが、ゆるふわギャングとKOHHのことばかり考えてしまった5月でした。

 

*1:今では我々世代にとって知らない人はいないと思っている傑作『パルプ・フィクション』ですら、もう20年以上前の”クラシック”なんですよね。