はじめに業務的な事柄を話します
GORGE.INが2015年全力でプッシュするスタイル”SLAB”、そのオリジネーターであるDAFことDrastik Adhesive Force(ドラスティック・アドヒシブ・フォース)のニューアルバム、その名も『SLAB』が4月19日(日)、CDで発売されます。税込み1,620円です。今は各ショップ予約を受け付けているようです。オンラインショップで予約したら発売日当日には手に入るんじゃないかな。
このDrastik Adhesive Forceのアルバムリリースはホント待望でした。
Gorgeの次はSLAB?
どんな音か?まずはぜひ試聴してみてください。
この”SLAB”と呼ばれるスタイル、謎多きジャンル「Gorge」の中のさらに特徴的なある種の音を指していて、表面の凹凸が少ない滑らかな一枚岩のことを指す「スラブ(SLAB)」が語源とのこと。凹凸が少ない分、岩に貼り付くように進んでいく様が、その音と呼応しているところからそう呼ばれているようです。
その前に「Gorgeって何よ?」という方々はこちらを読んでみてください。
山岳地帯のクラブシーン(?)で生まれたと言われるGorge、クラブというからにはダンスミュージックなんだろうと思ってGorgeの聴ける現場に行った人ならお分かりかと思いますし、ボクも現場でたまに耳にするのが「踊れない」というコメント。ダンスミュージックなのに踊れない!?という困惑とフロアでの人の揺れ動く様は異様で、このGorgeという特異なジャンルと呼応しているかのよう。
生まれるべくして生まれたGorgeのダンス解釈、”SLAB”
そのGorgeのアーティスト(いわゆるブーティスト)の中でも特にその傾向が強いと言われているのが、このDrastik Adhesive Forceというブーティスト。
聴いてみるとたしかにとっても遅い。そして重い。その形容だけ取ってみるとまるでドゥーム・メタルかのようです。(ちなみにボク、カテドラルが大好きです)
しかし、このSLABなトラック群、GorgeのDJ(いわゆるOne Push)をしているボクにとってはメチャメチャ効き目のあるダンストラックで、とにかくアルバムを!と待望していたもの。
遅くて重いドゥーム・メタルっぽい音がなんでダンストラック?という疑問には、Drastik Adhesive Force本人が過去にインタビューで答えています。
- 10年くらい前にBPM65で作り出したのは何かきっかけはあるんですか?
DAF:きっかけは明確にあって、もともとテクノのDJやってたんですが、そのDJをやるときのブレイクの曲を作ろうと思ったんですよ。だいたいかけてたのがBPMが130くらいだったので、その半分で65、っていうことで作り始めたらハマってしまったっていう。
- 「ハマった」というのは具体的に言うとどんな感覚だったんでしょうか?
DAF:なんというか、この「速さ」、というか「遅さ」が聴いたことのないものだったので、すごく新鮮に聴こえて。この「遅さ」で音楽作ることが可能なのか、踊る曲を作ることはできるのか、という挑戦をしてみよう、と思ったんです。で、さらに65から5落としてみたら聴きやすい曲ができて・・・って完全に俺基準の「聴きやすさ」なのでまったく一般的では無いと思うんですけど(笑)。すっと耳に馴染んだ感じだったんですよね。
GORGE.IN.CLIPS - 「この遅さで音楽は可能なのか?」〜Drastik Adhesive Forceインタビュー
テクノやハウスの120〜130というBPM、そしてブレイクとして半分の60〜65というBPM。仕組みとしては簡単かもしれませんが、音とその作用はそんなに簡単には言えない。
音にのめり込んでいく様が描かれている
BPM120くらいのトラックで踊って(ノッて)いて、ブレイクが来てスピードが半分になる。そうすると踊っている側も動きが半分になり、それまで飛び跳ねていたのが深々とお辞儀を繰り返すような異様なムーヴをしだす、この感じ。テンションだけは120でスポーティーな息遣いなのに、動きがまさに這うように身体を前後する。この時に生まれるのは正にグルーヴで、”SLAB”はそれを掴んではなさない。
聴いている方も、それまでのフィジカルなコンディションそのままに、音の隙間、僅かなクラックに強引に埋め込まれるかのように、その重いグルーブにのめり込んでいく。そして浴びせかけるリズムバリエーションが霧のシャワーのように身体にまとわりついて体力を奪っていく。
”SLAB”の持つブレイク感というのは、ちょっとした小休止ではなく、ある一定のスピードを飛び越えた先のバニシング・ポイント(消失点)にほかならなくて、そこに吸い込まれると、それまで踊れないと思っていたGorgeの他のトラックまでもが濃厚なダンス・ミュージックにしか聴こえなくなってしまう。
そんなアルバムがとうとうリリースされます。
個人的にも今までDJ/One Pushで使い続けて、低反発マクラのようにアタマにまとわりつくその音をぜひ聴いて、踊って、使って、作って、一緒に楽しみたいものです。