そのドアを開けたらゾンビがいる

わかっているんだけどねぇ〜☆

『シビルウォー』超人を超えた壮大で現実的な群像劇

 

シビル・ウォー
シビル・ウォー
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マーク・ミラー
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映画も大ヒットした『キック・アス』のマーク・ミラーによるマーベル・ユニバースのヒーロー112人もが登場するクロスオーバーものの問題作。ネタバレ覚悟で感想を言わずにはいられない。

まだまだアメコミ歴は浅いですが、ボクはこれ、大好きです!

 

なんという豪華さよ

 

スパイダーマン、X-メン、アイアンマン、パニッシャー、デアデビル、ファンタスティック・フォー、マイティ・ソー、そしてキャプテン・アメリカ…登場するスーパーヒーローたちの映画化作品をざっとあげてもこんなにある超カオスな世界。

巻頭には登場人物紹介が100人を超えて掲載されているんですが、初めは頑張って一人ひとりチェックしてみたものの、正直途中で断念した。

いや、マーベル・コミックを読み続けている、歴史を熟知している方でもない限り、これは覚えられない!ボクはいっそここを飛ばして1回目を読み始めることをオススメします。

各キャラクターのことを理解していたらまた違う印象を受けたんでしょうが、わからないものは仕方ない。読み進めるしかありません。でも、せっかくの紹介を飛ばせ、と言っちゃうくらい本編のスピード感がスゴい。

 

超人を超えたシリアス路線

 

ウォッチメン』と『バットマン:ダークナイト』からアメコミに引きづられてきたボクは、どちらかと言うとDCコミックの方が好きで、マーベル・コミックは、これは好みの問題ですが、どうもとっても失礼な言い方を敢えてすると「薄っぺらく」感じちゃっていた(それはそれでイイ意味の長所でもあると思いますが)のですが、本作は救いがたいリアルな問題定義とそれに立ち向かう混沌とした世界観がたまりません。

そこにあるのは、超人を超えた世界観。カンタンに言うと「スーパーヒーローたちの苦悩」という前出のDCの大作に共通する世界観があります。シンプルな「スーパーヒーローと人間」「スーパーヒーローと悪者と人間」みたいな弱者として守られる人間ありきのスーパーヒーローの大活躍ではなく、スーパーヒーローたちだって人を超えたチカラを持つがゆえに大きな苦悩を抱えるという子供心に観たヒーローにはありえない姿を晒します。

 

仁義なきスーパーヒーローの戦い

 

そこで思い出すのが『キングダム・カム』アレックス・ロスのアートが美しい傑作です。この『キングダム・カム』が苦悩するスーパーヒーローにもギリギリの尊厳をもたせていた、と解釈すると、『シビル・ウォー』はそれすら取っ払っちゃった。あの『キック・アス』みたいなストーリーを思いつくマーク・ミラーです、落とす時はとことん落とす。もう、すでに超人的な能力とか関係なく、ストーリーで引っ張っていく。

あのアイアンマンが、あのスパイダーマンが、あのキャプテン・アメリカが、みたいな展開が次々に起こって、それぞれ主役級の「スター」の輝きに一旦泥をぶっかけるかのよう。

112人も、それぞれ、共演しているスーパーヒーロとヴィラン(悪役)の関係こそあれ、個別に近い状態で人間を超えた能力をもった者たちをマーク・ミラーという監督は裁かなければいけない。スーパースターだらけの集まりがそれぞれの自主性で成立することはやっぱり難しく、野球でもサッカーでも名将がそれを束ねて全員に最高のパフォーマンスを発揮させるように、マーク・ミラーは見事な指揮をとります。

 

 

場合によっては「このキャラクターをそんなあつかい!?」「このキャラクターはそこまでではないだろう」みたいなこともあるかもしれませんが、その点で思い出したのは日本映画の傑作『仁義なき戦い』シリーズ。「えっ!?梅宮辰夫さん、そんな簡単にはけちゃうの!?」みたいな豪華なさばきっぷりが強烈な群像劇の傑作ですが、大スターを勢ぞろいさせた状態では、あえての誰々降ろし、みたいな掟破り感も必要なんだと思います。

そういう意味で、「ここでこの人か!」とか、「えっ!?この人にそんな重要なフリしていいの!?」っていうのは、読んでいるボクがまんまと揺さぶられてるのかもしれない快感すら覚える。

 

予習しとくに越したことはない

はじめに100人を超える登場人物を頑張って把握する必要はない!なんて言ったことと矛盾しますが、予習できるのであれば、やっぱりしておくと楽しい。

ボクは『シビルウォー』を読む前に、これは特に計画したわけじゃないけど、映画版の『ファンタスティック・フォー』の2作、『アイアンマン』の2作、『X-メン』シリーズ全作、『マイティ・ソー』は観ていました。

グラフィック・ノベルもここにリストしているモノのうちのコメント付きのものは読んでいたので『ソー:マイティ・アベンジャー』の中にサブマリナーが出てきたり『X-MEN:ファーストクラス』ではドクター・ストレンジが出てたりとマーベル・ヒーローズに少し馴染みが出来つつありました。パニッシャーとかデアデビルは興味はあるけどまだ観たことがないとかそういう範囲。

 

 

この、少し知ってる、とりあえず知ってる、というレベルが逆に良かったのかも。それぞれのキャラクターへの思い入れまではまだうまれていない段階で素直にストーリーを追えます。

それに、読んでいると全員がなにかしらで最強に強いので(怪力とか、姿を消せるとか、ビームみたいの出せるとか、爆発するとか)もう誰が一番強いとかそんなことどうでも良くなっちゃう。それよか、錚々たる役者陣を監督たるマーク・ミラーがどう味付けして魅せていくかというのがポイントなんだろうなーと思うと、「えっ、じゃあマーベル・ユニバースの川谷拓三は誰だろう?」なんてうがった楽しみ方すら出来る。

歴史あるキャラクターやシリーズをこう解釈するか?みたいなのは楽しみ方のひとつでもあると思うのです。

 

終わり良ければ全て台無し?

最後、えーっ!!!というエンディングで本作は着地します。でも本作の自体もその前にあった『X-MEN/アベンジャーズ ハウス・オブ・M』の流れを組んでいるとのことですし、本作の後も『デス・オブ・キャプテン・アメリカ:デス・オブ・ドリーム』や『デス・オブ・キャプテン・アメリカ:バーデン・オブ・ドリーム』などが控えているらしいです。

 

 

そのドロッとした終わり方は、同時に続く新しい展開の幕開けでもあったりする所がきっとマーベル・ユニバースのオモロいところなんだと思うし、マーベル・コミックの映画化も遂に『アベンジャーズ』までたどり着いちゃうわけですから、その連鎖反応たるや本当に侮れなくて「薄っぺらく」とか言ってホントすみませんでした…

 

アベンジャーズ 公式トレーラー


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あー、『シビルウォー』も映画化しねーかなー!!!