非常に偶然が重なったんですが、ランチをめぐる冒険の終着点としてたどり着いたお店が『LiveCafe Again(カフェ・アゲイン)』というむさこの有名なレコード屋『PET SOUNDS RECORD』の地下にあるお店でした。
前々から存在は知っていたものの、特に意味はなく入った事がなかったこのお店に入って、それはそれは貴重な体験をしてきました。
きっかけは『バートン・クレーン作品集~今甦るコミック・ソングの元祖~』というCDのポスターでした。
この「カフェ・アゲイン」というお店はライブと落語もやったりするカフェです。
初めて入るお店が地下なので、入って席に着いた時に半ば癖のようにSoftbankの電波が入らない事を確認して、まあこの空間はオモロそうだから電波が入らなくても良いや、と食事を注文をした後で机の上にiPhoneを置いたまま席から離れて店内にあるCDを見ていたら、「無線LANがあるからどうぞ」とお店のオーナーさんに声をかけていただきました。そう、無線LANのあるカフェ!すばらしき無限インターネット!
店内には(写真を撮り忘れましたが)いろいろなCDやアナログ、雑誌や本が置いてあったり飾ってあったりして、もうこれは半日つぶせるわー、と思っていろいろ見ていましたが、その中でも、目に入って気になったのがこのポスター。
なんとも味のあるデザインに「今甦る、コミック・ソング」というキャッチ。これは非常に気になるッ!!!
お店ではゆる〜い感じで音楽も流れていて、「これはリクエストしたらかけてくれるかも?」と訊いてみたら、「いいですよ。実はこのCDはうちで企画して作ったんですよ」と、このCDを自主制作でリリースするいきさつみたいなものを、いろいろと聞かせてくださいました。
その大きな要因の一つに『SP盤とSPプレイヤー』という存在があって、SP盤のものをCDとして残したい、という気持ちがあったらしいです。(すごく端折って書いているので、こちらもご覧になったりすると良いと思います。→「BURTON」)
ボクは20年代のカントリーブルーズが好きで、歴史を調べたりしてた時に、文字情報として『SP盤』というものの存在、78回転という回転数のことなどをやんわり知ってはいたんですが、「是非SPの音を聴いてほしいんです。今出しますよ。」ってSPプレイヤーを出してくれたんです!
SPプレイヤーとか、マジでビビった!
そして出てきたSPプレイヤーです、ドーン!
(iPhone 3GSで撮った写真ですが、お楽しみください)
これがちっちゃい古いスーツケースみたいな鞄みたいなのを開けて登場するSPプレイヤーだ!
ディテールがいちいちカッコいい。例の犬もいますよ。(参照:マークの由来 会社情報 |ビクター)
電源は、回転式!つまり、ポータブル・プレイヤー!
1曲聴く為に、ハンドルみたいなものを横にさして巻くんです。イカす!
SPプレイヤーの針は、1回聴くごとに交換するらしいです!これはSPレコードを痛めない為、というのもあるらしい。SPプレイヤーの針はまだ売ってるんですって。
使い終わったはり入れは、SPプレイヤーの角に隠し引き出しがあってかわいいw
このアームが!このアームのセクシーぐあいっつったら、もうッ!曲線美というか美しいフォルムというか、本当にセクシーという言葉がぴったり来ます。
そして、実際にSPレコードをかけてくださっているところをiPhoneで録画しました。オーナーの石川さんに許可もいただいたので、ここでみなさんにお裾分けをしたいと思います。
SPプレイヤーでSP盤を聴いた。
※youtubeより。RSSリーダーでは表示出来ないことがあります。
もちろん、これは生で聴くにこした事は無いです。ちなみに、SPプレイヤーはいわゆるボリューム、というものがなく、結構大きな音がします。石川さんも「家では聴けないから、河原とかで聴くと気持ちいい」というような事をおっしゃっていました。
そして、このSPプレイヤーで聴くSPレコードのコレクションの中に、バートン・クレーンさんのものがありました。
昭和初期のものですから、文字も逆に書いてあります。「いたりへかへ家(家へかえりたい)」と「いたみのが酒(酒がのみたい)」。
そう、このバートン・クレーンさんの曲、とにかくもうタイトルからしてふざけたものばかり。その経歴はこんな感じです。
昭和初期の日本にこんなおかしな外国人がいた!おかしな日本語で歌う外人歌手1号!
@TOWER.JP - Burton Crane - バートン・クレーン作品集:今甦るコミック・ソングの元祖
わ ずか4〜5年の間に30数曲の録音物を残し、日本歌謡史に素晴らしい足跡を刻みつけた、愛すべきヘンな外人 バートン・クレーン。コミックソングの元祖ともされる楽曲のなかから、珠玉の25曲を収録した初復刻盤「バートン・クレーン作品集」が遂にリリース!ほぼ 日本語+英語の構成で、「羽生の宿」「蛍の光」などなどのメロディーも満載。聴くと争いごとや悩みなんかもきれいさっぱりブッ飛びますよ!
アーティスト・プロフィール
バートン・クレーン(1901-1963)・・・『ジャパン・アドヴァタイザー」という英字新聞の記者として昭和初期に来日。本業の傍ら、アメリカの古い 歌などに片言の日本語歌詞をつけて宴席で歌ったところ、当時コロムビアのアメリカ人社長ホワイト氏に認められ1931年に「酒がのみたい/家へかえりたい」をリリース、ヒット曲となる。その後コロムビアから都合17枚(31曲)、テイチクから1枚(2曲)共演を含めSP盤を発売し日本の歌謡史に特異の存 在をアピールした。戦争を境に一旦帰国したものの、その後もFEN放送のアナウンサーやベニー・グッドマン楽団来日の際の司会者として再来日、本来の ジャーナリストとしてもその足跡を残した。現在は戦前ジャズ・ソングのコンピレーションや全集ものの中でしか聞けないレア音源となってしまったが、SPマ ニアの間では人気が高く、そのコミカルな日本語とともに元歌となっているアメリカン・ソングやルーツ・ミュージック研究の観点からも現在紹介する価値のあ る歌手。今後各方面からの再評価・研究が待たれるところである。
スゴい人なのに、内容がアホすぎるw 曲のタイトルもこんな感じ。
1.酒がのみたい
2.家へかえりたい
3.ニッポン娘さん
4.おいおいのぶ子さん
5.人生はかない
6.かわいそう
7.月を眺めよ
8.コンスタンチノープル
9.威張って歩け
10.夜中の銀ブラ
11.仕方がない
12.モダーン百万パーセント
13.天の岩戸
14.雪ちゃんは魔物だ
15.酒場の唄
16.ジョッキ・ビール
17.よういわんや
18.恋人に失恋した
19.誰方かやるじゃろ
20.女の天下
21.金の世の中
22.のんきなパパさん
23.のんきなママさん
24.アイ・ラブ・ユー
25.バナナは如何
25曲って、当時かなりヒットしていないと残せる枚数ではないです。
戦前/戦後の時代の空気をきっとバートン・クレーンさんののんきな歌がスゴく癒したんじゃないかな、って思うんです。片言の日本語みたいな歌い方で。(もちろん、ご本人の本業は別だし、ジャーナリストとしてもかなりの方とのこと)
もう、これは聴かずにはいられないッ!と、聴かせていただきましたが、すなおに爆笑しながら聴いちゃいました。
たとえば、「家へかえりたい」という曲。この歌いだしがスゴい!本当にスゴい!
家へかえりたい 野心がありません
頭が痛い おなかが大変
家にかえりたくて一番始めに思いついた理由が「野心がありません」って、なんだよそれwww
もうヤバい。爆笑の連続です。しかも、メロディーは、なんかどこかで聴いたようななじみあるフレーズがちょいちょい入ってきます。
しかも、この「家へかえりたい」は、ASA-CHANG&巡礼の最近リリースされたアルバム『影の無いヒト』でカバーされています!
commmons (2009-06-17)
売り上げランキング: 26126
きっと、SP盤でしかなかった音源がCD化された事によって、本当にいろんな人の耳に届いているというのをその場でちょうどこの『影の無いヒト』をiPhoneの中に入れていたボクはびっくりしました。
カバーバージョンまで引っ張りだしてきて、本家を聴かない手は無い、ということで、youtubeで発見しましたので、さあ、お楽しみください!
家へかへりたい バートン・クレーン
※youtubeより。RSSリーダーでは表示出来ないことがあります。
個人的には、この『酒がのみたい』とか、もうひどくて最高でした!
酒がのみたい バートン・クレーン
※youtubeより。RSSリーダーでは表示出来ないことがあります。
酒飲みは 酒飲めよ
酒があれば オイ!! 怠け者
水はとても おいしい
が 酒飲めば 僕楽しい
(カフェ・アゲインの購入特典の歌詞カードレプリカより引用)
CDはいろいろなところで売っていて、Amazonでは残念ながら今あるのは中古でしたが(バートン・クレーン作品集~今甦るコミック・ソングの元祖~ )、楽天とかでは定価の2,000円で手に入ります。
バートン・クレーン/バートン・クレーン作品集〜今甦るコミック・ソングの元祖〜
できれば、ぜひ『LiveCafe Again』に足を運んで、オーナーの石川さんに実際のSPレコードの音を聴かせていただいたり、オモロい逸話とかのお話を聞かせていただきながら、カツオのダシが効いたおいしいオムライスをたべて、お土産にCDを買う、というボクがまんまとハマったパターンがちょうオススメです!
石川さん、素敵な音楽と楽しいお話、おいしい食事、どうもありがとうございました!また遊びに行きます!
『LiveCafe Again』の場所はこちら。