料理にハマり、遂には中華鍋をプレゼントしてもらったことや次は鉄フライパンを狙っていることを母に話すと、実家にもどこかに中華鍋があることや妹に鉄フライパンをプレゼントしたが(小さい子どもの世話で手一杯で)ケアに時間をさけずなかなかうまく使えなく眠っていることを教えてくれ、結果その鉄フライパンを貸してもらえることになった。どのメーカーのものか?を訊いたが覚えておらず(ちなみに自分で狙っていたのは山田工業所)、蓋を開けてみたらなんとリバーライトの3.2mm厚の28cmというサイズとしては希望にピッタリのものだった。
受け取った鉄フライパンはパッと見では普通に使い込んでいるものに見えたが、いざ洗ってみると確かに細かなコゲや落としきれなかった油が層になったような状態でブラシで軽く洗っただけでは取れず(新品の状態を知らないのでそれが一見使い込んだそれほど悪くない状態に見えた)、たまたまあったスポンジ状のヤスリでふと擦ってみるとその層の部分が削れたので、もしかしてなにかのコーティングを削り落としてしまったのか!?の焦って作業を止め、ネットで鉄フライパンのメンテナンスを調べた。
幸いなことに鉄フライパンもKING無水鍋のようにリセットができることを知ったので思い切ってリセットしてみることにした。
しっかり空焼きしたフライパンに水を流し、たわしで擦っていく。これもあとから知ったのだが、熱々の鉄フライパンに水をかけるのはものによっては変形の恐れがあるので、出来れば冷めたフライパンに水を入れ、それを沸かした方が良い。とにかく、それすら知らずに鉄フライパンの油の層を擦り落としていく。たわしでもどうにもならない部分を今度はスポンジヤスリ(100番)で擦る。
スポンジヤスリがすぐに油まみれになるので、その都度スポンジの方もお湯で洗う。ある程度汚れが落ちてきたら、また空焼きした後、オイルを流し込む。この過程を強火オンリーでやっていたので、鍋肌に残っていた汚れのせいもあり、すぐにコゲが再発する。再び擦りにはいる。合間合間でネットで情報収集(事前にやるべき!)し、鉄フライパンは中華鍋とは違って中火〜弱火で使用するものだということを学ぶ。その頃には汚れも磨き落とせてきて、火加減も分かったおかげで良い感じに油ならしもできてくる。磨き終わった鉄フライパンはまさに鉄板焼きとかの鉄板のようで、そりゃどっちも鉄なんだから当たり前か、というようなことに今更ながらにたどり着く。このあたりでようやく鉄フライパンの使い方のイメージが落ち着いてくる。なるほど、ステーキや餃子、お好み焼きを焼くのに最適なわけだ。(逆にいうと、そんなこともピンとこなかったくらいの初心者であり無知な状態でした)
試しにキレイになった鉄フライパンで卵(目玉焼き)を焼いてみた。中火で空焼きしたフライパンを弱火にしてオイルを流し込み、ならしたところで卵を割り入れる。白身の弾け方があまりみたことのない反応だ。白身に熱が通って、あとは黄身だなというあたりで恐る恐るフライパンをゆすってみたが目玉焼きは動かず、もしかしてくっついているのかもなと思いつつ蒸し焼きをし、黄身もほどよく火が通ったあたりでフライ返しを入れてみると、目玉焼きの底に差し入れたと同時に目玉焼きが滑っていった。クララが立ったくらいの衝撃。感動のあまりフライパンの上をなんども滑らせる。テフロン上での滑りとは明らかに違う。テフロン上が「さら〜」っという感じだとすると、鉄フライパンは「ツ〜〜〜」ですよ。スッゴい。
感動もそこそこに再び洗う。目玉焼きを焼いたあとの油と汚れみたいなものは、お湯をいれて軽く沸かすとほとんどが浮かび上がった。残りもたわしで擦ればほぼ落ちた。なるほど、基本のメンテはこれなんだな、と心に留める。
鉄フライパンの記念すべき第一回調理はステーキ、ハンバーグ、餃子を候補にあげ、ひき肉が安かったのでハンバーグに決定。ハンバーグは前回初めて作ったのでこれで2回目、しかも初の鉄フライパン。それも踏まえて前回と同じレシピで比較しようかとも思ったが、直前で読んだFOODIEのレシピで行くことにする。
【シェフ直伝】基本のハンバーグレシピ、プロのワザで肉汁ジュワ〜! | 三越伊勢丹の食メディア | FOODIE(フーディー)
タネをつくり、付け合わせや炊飯を同時に着地させるべく準備も揃ったところで焼きにはいる。
中火で空焼き弱火で油ならし再度中火にあげ恐る恐る鉄フライパンにタネをのせる。ジュワッという音色は上々。ここから3分、ノータッチで焼きをいれる。そこそこ厚めのタネだが、考えてみればステーキを焼く時の感覚に近いはずと思い、上手くいくならその3分で底面から1/3くらいに火が通って色が変わるはずと観察。3分経つころには見事に1/3くらいに火が通って色が変わっている。
フライ返しでひっくりかえすも樹脂製のフライ返しには重すぎるハンバーグでひっくり返すまで何度かバランスを崩す。鉄のターナーの必要性に目覚める(aka 物欲)。ひっくり返してからまたノータッチで3分、外側だけ見るに十分火が通った色になる。焦る気持ちを抑えながら、ここで火を弱め蓋をして蒸し焼きで5分待つ。ドキドキする。5分経ったら火を消し、蓋を開けずそのままさらに5分蒸らす。終わったら蓋をあけ、一番厚みのあるハンバーグに串を刺し染み出る肉汁に注目する。もし赤ければ再び火をつけて軽く熱を通さねばならない。しかし出てきた肉汁は透明だった。やった!
焼き上がったハンバーグを皿にのせ、鉄フライパンに残った油や肉汁に赤ワイン、ケチャップ、ソースに醤油と粒マスタードを混ぜて煮詰めてソースを作る。その頃には炊き終わった米も蒸らし終わる。付け合わせの野菜も皿にのり、最後にハンバーグにソースをかける。遂に鉄フライパンで作るハンバーグが出来上がった。
皿の上でナイフをいれたハンバーグの断面はちょうど良く火が通っていた。肉汁も(たっぷりとまではいかないが)流れ出てきた。フォークでハンバーグを押してみるとさらに肉汁が染み出した。炊き立ての米、蒸したニンジンとブロッコリーとともにハンバーグを貪り食べた。食べ過ぎた。2回目の、初めて鉄フライパンで焼いたハンバーグも本当に美味しかった。
食べ終わったあとで鉄フライパンを洗った。ソースの残りをお湯とブラシで軽く流してからお湯をため火にかけて軽く沸騰させて、たわしで擦る。これだけですっかりきれいになった。締めは空焼きだ。今回は頻繁に使う前提なので油は塗らなかった。また新たな扉を開いてしまった。嬉しくて即効でカルカヤタワシを注文した。
私はこれを多少の実益を伴った趣味としてやっているので、ああだこうだ手間隙をそこに裂くことをいとわずそこも楽しめるのだが、手の離せない小さな子どものケアをしながらこれが出来るか?と言われればちょっと厳しいかもしれない。鉄フライパンを手に入れていたということはきっと同じように美味いハンバーグを作りたいとかそういう気持ちがあったんだろうと思う。いつかこのフライパンを妹に返す時にはきっとこういうことに時間をさける余裕が出てきたころだろうし、その頃にはフライパンがうまく育っていてケアも含めたコツみたいなことを見つけてそれ込みでキレイな鉄フライパンとして引き渡してあげられたらいいなと思っている。