Apple Musicのお試しが開始されてからというもの、家で音楽を聴くのにずっとApple Musicを使っている。
iTunesのプレイリストを破壊するしないのバグについて解決するまではiCloudミュージックライブラリを使う気にはなれないが、聴きたいものはだいたいApple Musicの「For You」タブからプレイリストやアルバムをピックアップしてAppleTVに飛ばして聴いている。
気に入ったプレイリストにはガンガンハートマークをつけているし、気に入ったアーティストに関しては曲やアルバムにハートマークをつけるだけじゃなくアーティストページに行ってそのアーティストをフォローしたりもしている。
そのせいかどうかはわからないけれど、For Youページに興味を引くものが表示されるケースがかなり増えたような気がしてる。
使いやすさに関しては、iPhoneの新しくなった「ミュージック」アプリに割りと抵抗がなかったというのもあるが、先行していたAWAやLINE Musicと何が違うのかなとぼんやり考えていた。
ちなみに、Apple Musicで聴くものの傾向は、それまでレンタルで入手していたような距離感の音楽ばかりだ。そもそもトップクラスに好きなモノは既に持っているか出たら買うかするので、そうじゃないすこし興味がある程度のモノや今まで掘っていなかったジャンルのモノ、チェックしていなかった時代のモノなど、代官山蔦屋などの在庫の多いTSUTAYAに行って20枚近くジャンル縛り・時代縛りなど毎回テーマを決めてまとめて借りてくるときのようなモノたちをガシガシ聴いている。
たとえばこんな感じ。
アサイラム・レコードの創始者がデヴィッド・ゲフィンだということをこのプレイリストを聴く際に調べて知った。ジャクソン・ブラウンなどの重なったジャケ写が聴くキッカケ。
トリビュートアルバムみたいにまとめてないとなかなか非カバー曲を集めるのはやっかいなので、こうやってまとめてもらえるのはありがたい。キャット・パワーがやるカバーはとりあえず安定感がありますね。
入門レベルのジャズならそこそこ聞いたつもりではいるものの、それってどれくらいかわかってない。ならば名門レーベルのクラシックをチェックしてみようか。
テオ・マセロという人について全く存じ上げませんでした。このプレイリストをキッカケにウィキペディアなどを読んでスゴそうな人だと知った。なかでもこちら(イジハピ! : 【第47回】テオ・マセロ是か非か)のエントリーで書かれている『A Tribute to Jack Johnson』についてのエピソードはスゴい話でした。
これまた名前は存じ上げませんでしたが、リバーサイド・レコードの設立者と聞いてハハーと。ビル・エヴァンスが好きでして。
どれも、そのあたりを聴きこんでいない私にとってのとっかかりとしては最適なフックがそのビジュアルとプレイリスト内の曲にあった。
プレイリスト以外にもアルバム単体も聴いていて、よく聴いているのはTalking Heads、Wire、Son House、ジミー・スミス、Counting Crows、Tom Waits、その他フォークミュージックやブルースのアルバムなど。これらは興味はうっすらあるものの購入には至らなかったモノたちだ(なかには数枚持ってる人などもある)。
ジャズが多めなのも、まさにジャズを良くTSUTAYAで借りるから。と、いうのも、あまりに広大すぎて何が良いのか何から手を付けたらいいのかがわからないので、TSUTAYAの棚(楽器ごとに分かれてくれている)のレコメンドのスペースにある人をとりあえず試聴して、気に入ったらそのアーティストの他のアルバムもチェックする、という聴き方がとてもしやすい。
Apple Musicを「使いやすい」と感じているのは、おそらくこのTSUTAYAのレコメンド・スペースやそのポップ的な感覚をApple Musicの「For You」に感じたからで、そのかわりそれ以外のタブはほとんど観ていない。
こういう、いままで時間や金銭的な問題でチェックしきれていなかったジャンルなりレーベルなりアーティストのモノはそれまで私にとってはTSUTAYAの専売特許だった。それがまるまるApple Musicになりそうだ。
それどころか、Apple Musicに入ってさえくれれば、今までCDじゃなくダウンロードでOKという買い方をしていた距離のモノたちは買わなくなる可能性がある。
このままでは買うモノは、Apple Musicにないもの、CDなどフィジカルでどうしても持っておきたいモノに限られてしまう。
それをダメというつもりは全く無いし、常に自分の知らなかった音楽を掘りながら聴けるというなんとも素晴らしい世の中になったとしか言いようがないのだが、そもそもスタートがモノラルのラジオやレコードだったりカセットテープで限られたお小遣いのなかから「もっと聴きたい!もっといろんなものを聴きたい!」と渇望して事前に可能な限りの情報を集め、それが出来ない場合にはジャケ買いという博打の末に聴きたい音楽をなんとか集めてきた世代としては、身に染み付いてしまった貧乏性というか、無制限に拡がる海みたいなものに罪悪感を感じます。「え!?ぜんぶボクが食べちゃっていいの!!!」みたいな罪悪感を。
「もしニルヴァーナに影響を受けたバンドがいたとしたら、そのニルヴァーナはピクシーズの影響を受けている。ピクシーズは70年代のパンクに影響を受けているし、その70年代のパンクは60年代に・・・そうやって辿っていくと、全てのロック・バンドはブルースに繋がっているんだ」
これはジャック・ホワイトの自身のルーツであるブルースについての言葉だそうだが、「そうやって辿っていく」ことをひとり黙々とやるのが物心ついた時からの音楽の聴き方だったので、Apple Music内という制限があったとしても、これだけのラインナップの中を自由に泳げるだなんて夢の世界だと、やはり思わざるをえない。
同時に、どんな音楽だって、選択というテーブルにのる時にすべて同じ重さでのってしまうことには脅威というかそういう気持ちを感じていて、なんというかもう言い訳できない状態なんだなーって思ってます。だってみんなが同じ引き出し持ってるんだもんね。あとはそこにどれくらい貪欲になっているかどうかだけだもんなぁ。
ちなみに、知らない世界に飛び込むのに、こういったガイド本は当時本当によく助けられたし、これらがなければ知らなかった音楽や知識はたくさんあったと思う。
もちろん、Apple Musicのお供に、読みながら聴き漁るというのは、かなりオススメです。