そのドアを開けたらゾンビがいる

わかっているんだけどねぇ〜☆

M・ナイト・シャマラン監督の海外ドラマ『ウェイワード・パインズ 出口のない街』に対する抗えない気持ちと妄想

あのM・ナイト・シャマランが手がける海外ドラマ『ウェイワード・パインズ 出口のない街』がAmazonインスタントビデオでレンタル配信を開始してました。

 

M・ナイト・シャマラン監督というのは、なんて言うんでしょう、それはもう独特で、そういった前提で私は対面していますし、この人に関してはほぼ自分の妄想で「こうあって欲しい」という前提でしか話ができません。だから実際はかなり「そんなことない」のでしょうけれど、それでもやめられない。そして大好きなんです。

 

『シックス・センス』というまともなヒット作を出しておきながら、その後の作品群は飛び抜けてマイ・ワールド感が強く常人の理解を超えたトンデモな作品が連発します。全くめげずにドンドンやります。

スゴく良い格言を言ったみたいなドヤ顔で全く意味のわからないことを言い続けている人、というのがこの人に対するイメージで、そのおかげか公開前には話題を作りやすいフックは沢山あるのに、いざ蓋を開けてみたらフックしかない映画だった、みたいなことがある人だと思っています。

伏線は回収しないし、そもそもそういうものが存在していることが常識のような顔をしています。たとえば一般的には赤い郵便ポストがすべて黄色で描かれていたら「お?これはきっとこの後なにかあるな?」という期待で観てしまうのですが、何もありません。郵便ポストはただ黄色なんです、そこでは。

普通だったら恐らくただのつまらない映画になるんでしょうが、この人の映画はなにかひっかかる。ひっかかったものを手にとって観てみるとただの濡れたビニール袋だった、みたいなことだとしても、それでもしつこくひっかかる。なにより発信側が思いっきりのドヤ顔をしているので、そのうちただの濡れたビニール袋がなにかとてつもない宇宙からの発信物のように見えてすら来る。説明してくれないならこちらで意味を付けましょう、と。

 

そんな楽しみ方をした時のM・ナイト・シャマラン監督ってタマラナイと思っていて、たとえばデュプラス兄弟が監督した『ハッピーニート~おちこぼれ兄弟の小さな奇跡』ではシャマラン監督の『サイン』(大好き!)自体をテーマの中心として引用していますが、そもそも『サイン』を引用することがとても捻くれたジョークで、映画自体はヒューマン・ドラマのようでいて、テニス・ダブルスでパートナーのサーブが毎回後頭部に当たるくらいにあえてそこにぶつけて来てる作品じゃないかと思っているんです。シャマラン監督の楽しみ方が同じだろう、と。もちろん妄想です。

 

ハッピーニート?おちこぼれ兄弟の小さな奇跡 (字幕版)

ハッピーニート?おちこぼれ兄弟の小さな奇跡 (字幕版)

 

 

 

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今回のM・ナイト・シャマラン初の海外ドラマ『ウェイワード・パインズ 出口のない街』に関しても、私はそういう気持ちで猛烈に楽しみにしている。

 

 

勝手な楽しみ方しか出来ない一例としてあげると、たとえばプロモ動画にあるようにこのドラマには謎の3つの掟というのがあります。

  1. 街の外に出るな 
  2. 過去について語るな
  3. 電話を無視するな

これはもちろんストーリーの重要なポイントなんだろうけれど、私は勝手にドラマシリーズ制作中に追い詰められたM・ナイト・シャマランが今回「人に言われて嫌だった言葉ベスト3」なんじゃないかな、とか思ってる。

 

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カワイイ顔したシャマラン監督

 

制作に行き詰まって逃げようとして「街の外に出るな」(コーエン兄弟の『バートン・フィンク』みたいなことだ)、興行的に失敗した「過去について語るな」、そしてなにかを催促する電話に出なかったんでしょうね、「電話を無視するな」。強迫的にそういうものをドラマにすり込んでくれたに違いない、と妄想する。

 

ドラマの中に目を移すと、「主演:マット・ディロン」というだけでオールタイム・ベストに『ドラッグストア・カウボーイ』が入っている私にとってはまたとないご褒美のようなもの。

 

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眉毛と目がほぼくっついてる

 

『メリーに首ったけ』なんかではコメディもいけるところをアピールしていましたが、それでも80年代に一世を風靡した俳優というレッテルが今でも付いている。私にとっては『ドラッグストア・カウボーイ』の主人公ボブ役の人なので基本カッコイイし、昨今のマコノヒーじゃないけれど、観てみると実はものすごく“味”がある人だと思ってます。本人が望む形かどうかはわからないけれど。その味にハマるとちょっとやそっとじゃ抜けられないのは監督と近しいモノ。ある意味、良いコンビが誕生しました。

 

また、おそらくキーパーソンとして登場するカーラ・グギノとジュリエット・ルイスという二人の女優もタマラナイ。

 

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共通する顔のプニプニ感

 

この二人に共通する卑猥さ(“肉厚な顔”というのも共通ポイント)たるや!存在自体がなんか卑猥かつジトッとしている。湿度80%くらいあるモイスチャー女優。カーラ・グギノは今をときめくザック・スナイダー監督やロバート・ロドリゲス監督に、ジュリエット・ルイスはかつてマーティン・スコセッシ監督やクエンティン・タランティーノ監督にその卑猥さ・湿度を認められている(はず)。

このジトッとした感じがシャマラン・サスペンスに与える存在感たるやものすごい効果です。何かしても何もしなくても言動全てが思わせぶり。必要のないエロスとかホントにスゴい。

 

内容はこんなお話だ。

失踪した同僚の行方を捜すシークレット・サービス捜査官イーサン・バークは、アイダホ州の田舎道で不慮の交通事故に遭ってしまう。辛うじて一命を取り留めた彼は、近くのウェイワード・パインズと呼ばれる閑静な田舎町へたどり着く。すぐに家族や職場に無事を知らせようとするものの、なぜか一切連絡を取ることが出来ない。そればかりか、非協力的な保安官や病院の看護婦によって、イーサンは街に留まることを余儀なくされた。
やがて浮かび上がる数々の謎。
一見すると穏やかに暮らしている住民たちだが、実は監視カメラや盗聴器で常に行動を見張られており、厳格な掟によって恐怖支配されていた。いったい誰がどのような理由で、彼らをこの小さな街に閉じ込めているのか。

一方、外の世界ではイーサンの上司が彼の行方を探っていたが、事故現場に残された車からはイーサンが乗っていた痕跡すら見つからなかった。彼の安否を心配する妻は、独自の手段で夫の消息を追うことになるのだが…。

町の住民からも外部からも救いの手がなく、八方塞がりの中で窮地に追い詰められたイーサン。そんな彼に唯一、バーで働く女性ビバリーが力を貸す。果たして、彼はここから生きて脱出することができるのか?

「ウェイワード・パインズ 出口のない街」|オフィシャルサイト

 

閉ざされた街や世界とその異常性みたいなモチーフはシャマラン監督の映画に度々登場する。『ヴィレッジ』という映画を撮ってるくらい。

またこのドラマにかぎらず映画にもよく「数々の謎」は登場するが、それは永遠に「数々の謎」として残っていく。むしろ解明してほしくない。だから、きっとこのドラマでは「数々の謎」は、増え続けて「謎ショーケース」みたいになる。そういう展開を期待している。

 

「プレビュー映像」としてちょっとしたインタビューなどを含む紹介映像と、第1話にあたる「前編:偽りの理想郷」はAmazonインスタントビデオで無料配信されているのでぜひ観て欲しい。 

プレビュー映像

プレビュー映像

 
前編: 偽りの理想郷

前編: 偽りの理想郷

 

 

観ていただくとわかると思いますが、1話からスゴい風呂敷を拡げていく。拡げた風呂敷は後にたたまないといけないことを知らない子どものような勢いだ。興奮を隠し切れない。もう、テレンス・ハワード扮する保安官ポープが食べているラム・レーズンすらストーリーに大きな影響を与えそうで怖い。私はラム・レーズンが大好きなのでそこも期待している。

 

さらに本シーズンとは別にスピンオフエピソードが本エピソードと平行して進んでいる。

 

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Surface Pro3のプロモを兼ねているようだが、そういう抜かりのなさもシャマラン監督の魅力だ。スポンサーは大切だ。

 

DVDレンタルは秋ごろらしく、現時点ではFOXチャンネルと各種VODサービスで視聴が可能だ。

Amazonインスタントビデオでも現時点で5話までが配信されており、FOXチャンネルから1話か2話ずつ遅れて随時配信されている様子。DVDまで待つ気はないのでレンタル配信で観ます。

 

前編: 守るべき掟

前編: 守るべき掟

 

 

はたしてシーズンがいくつまで続くのかはわかりませんが、シャマラン監督には壮大な謎が散乱するミステリーの世界をたっぷり作って欲しい。

 

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