何で英語で歌うの、という問いかけに対してボクなりの考え、というかそうであったらいいのになぁ、という想いを。
結論から言うと、現在の該当するようなものの大半は、「そういうものだから」じゃないかな、と思います。
たぶん、これをさかのぼると十何世紀のクラシック音楽とかまでさかのぼったりできそうな気がしますが、ボクはクラシック音楽のことはわからないので、かろうじてわかる1920年代のBlues以降で考えてみました。
昔のアメリカの南部のブルーズはボクの知る限りでは、奴隷としてつれてこられた黒人が単調な農作業の苦痛を紛らわしたり、あるいはなんらかの身体のトラブルで作業ができない人が、生きていく為に演奏したり、がルーツだと思います。
「ブルーズ」に興味があって詳しく知りたい人はこんな本を読んでみるといいと思います。ボクも大学時代、読みました。その後、無くしちゃったけど...
冨山房
売り上げランキング: 510632
で、そのブルーズという当時のアメリカから見たら、ちょっと低い階級の大衆(酒場)音楽が後のロックンロールになります。それまでカントリーなどを演奏していた白人がそのブルーズを真似して(取り入れて)演奏した事がきっかけのひとつだと思います。誤解を恐れずに言いますが、なぜ奴隷として雇ったりしていた人たちの音楽を真似したんだろう、と考えると、単純に「カッコ良かった」からじゃないかなー、と思います。
(ここまで来るまでにも歴史的に様々なことがあったと思うんですが、今回はいろいろな所を強引に割愛します。と、同時に事実と異なる解釈もあるかもしれません。この先に書く事もかなり強引ですが、ボクの頭を掘り起こしてみたら文明開化の音じゃなくそういう記憶がよみがえった、という事でその前提をご了承ください)
カッコイイから真似をして歌ってみた、でも当然オリジナルと同じような良さは出ない、その代わりに突然変異的に独特な音楽に聞こえてしまった。それこそプレスリーとかビル・ヘイリー(「ロック・アラウンド・ザ・クロック」の人ね)とかの時代ですね。彼らは自分たちが好きだったブルーズとかを演奏したでしょうし、「なんでそんなの演奏するの?」の質問に対しての答えは、はじめはそこにはすごくシンプルな「好きだから」という気持ちだけがあったんじゃないかな、と思います。
かなり、かなりのちに、ロックンロールとかフォーク・ミュージックとか海外の音楽が日本に「輸入」されます。様々な音楽が「輸入」される、という意味では、日本だけじゃなくイギリスだってブルーズやレゲエが輸入されたし、ジャマイカにはアメリカのR&Bやロックンロールが輸入されたりしていました。何が言いたいかというと、とても自然な流れとして日本にも海外の音楽がやって来た、ということです。
それまで、日本には日本の音楽が存在していましたし、そこにロックンロールみたいなちょっと異種な音楽がやって来て、好奇心旺盛な人たちはそれを一生懸命真似してコピーして、自分たちで演奏しました。演奏する理由は様々あったと思いますが、まずは真似をしたんじゃないかな、と思います。もし、ボクなら、間違いなく真似します。
そうこうしているうちに、自分たちでも、すごく自然な欲求として「その音楽」を作りたくなった。でも母国語は日本語です。限られた人以外は英語で歌ったり、歌詞を作ったりは出来ません。そうなると、どうしても歌詞は日本語になる。音は日本で育った音楽的なバックグラウンドをふまえた(フィルタとして通った)ロックンロールになったんじゃないかな、と思います。
でも、やっぱりそれだと、なにかたりない。たぶん、それは、自分の憧れて、時間や情熱を捧げた「Rock n' Roll」とは、「Jazz」とは、「Folk」とは −致命的に違う人種だったり文化の壁に近いものだと思いますが− 圧倒的に何か違う。そこでやっぱり好きなものをちょろっと歌いたくなっちゃったんじゃないかな、自分が作った歌に影響を受けた大好きな要素を素直な気持ちで歌ったら、
何で 英語で 歌うの、Tell Me Why♪
って、すごく近いところで、自分の思うオリジナルなスタイルをやってみちゃったんじゃないかな、って思うんです。
それだけでも、すごく大きな一歩だったんじゃないかと思います。だって、英語と日本語が同じ歌の中に同時に存在しちゃうんですもの。白人は黒人になれなかったし、黒人は白人にはなれなかったし、日本人はアメリカ人にはなれないんだけど、歌の中で言葉という要素で日本とアメリカだったり、白人と黒人だったりが、同じ空間に同じ要素として存在したんじゃないかな、と。
たぶん、始めてそれを聞いたら、かなり奇妙なものだったと思います。有名なプレスリーのダンスや歌がはじめは奇妙なものとしてみられる事もあったのと同じ、というとちょっと違うのかもしれないけど、でもそういう事じゃないかな、と思います。
その次の世代は、気づいたら、日本語の中に英語が入る歌を聴いていて知っていて歌っていて演奏していた。その先の世代は、ことあるごとに自分たちのルーツであるとか音楽としてのルーツであるとか、いろんなことをグツグツ大きな鍋で煮込みながら音楽をやって来た。
生まれたての赤ちゃんが、それ相応の時間を経て、しゃべり出したり、歩き出したりするように、音楽も(瞬間最大風速的な事はあったにせよ)じっくりじっくり変化して育っていったのではないかな、と。
なぜ、という質問の答えは、きっと「歴史」であったり、「文化」と答えるのが、もしかしたら正しいのかもしれないけど、ボクは「好きだし歌いたいから」というのがThe Reasonじゃないかな、と思っています。
だって、「なぜ好きなの?」って訊かれたら、「The answer, my friend, is blowin' in the wind.」としか言いようがないもの。
Sony (2004-06-01)
売り上げランキング: 30995